”破壊が無ければ再生は無い 生命の循環の永遠の形 真実の種から産まれた木”

MorningParkには大きな樹が生えていて、世界中の色とりどりの美しい花が咲き、あらゆる果物の実がなります。

このMorningParkの樹は、表現をするための掲示板です。どんな言葉でも、詩や小説、散文、イラストや音楽でもかまいません。あなたの思いを、届けてみませんか。
それはこの木を育む栄養になって、実をつけ、花を咲かせ、ここを訪れた旅人を癒します。

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管理人 えん

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森のログハウスに名前がついた日の話 の続き。
 えん E-MAILWEB  - 12/1/22(日) 3:33 -
http://ameblo.jp/the-road-to-truth2/entry-11097133753.html
森のログハウスに名前がついた日の話 の続き。
「さっちゃんとYdalirのみんなへ」

(ビクッ!)

ナナシは何かの殺気を感じます。
それは森の入り口の方から感じられるのでした。ナナシはアップルパイを口いっぱい頬張ったままで、顔だけをゆっくりそちらを向けます。

「***!!」

口いっぱいにアップルパイを頬張っているので、声にならない悲鳴を上げて、ナナシは止まっていたえんの肩口からずるりと落ちます。帽子がずれて、ナナシはすぐにそれを目深に被りなおして、そっとそちらのほうをもう一度見ます。
そこには物欲しそうな若い女が、木の陰からそっとこちらを覗いていました。

「ど、どうしたの、ナナシ。」

えんがそう問いかけると、ナナシが指差します。えんがそこをみると、白樺の木陰に隠れてそこにいたのは、えんの友達のさっちゃんでした。

「あ。さっちゃん。」
「ど、どうもえんさん〜。」

ナナシは急いでアップルパイを飲み込むと、エリアの後ろに隠れます。

「こらこら、失礼ですよ。ナナシ。」

エリアが諭しますが、後ろに隠れてそっと、さっちゃんと呼ばれたその若い女を見ているナナシです。
若い女は、恥ずかしそうに赤い顔をしてうつむいて、ファンシーな刺繍のされた緑色のカーディガンのすそを、もじもじといじっています。
えんが彼女を紹介します。

「こちらは、僕の友達のさっちゃんで、絵描きさん?役者さん?とにかく、夢いっぱいの人だよ。」
「あの、楽しそうでついうっかり来てしまいました。お邪魔してしまって、ごめんなさい。驚かせて、ごめんね?」

さっちゃんが優しい笑顔で言うと、ナナシはもう警戒を解いて、えっへん大丈夫という体でテーブルへ出てきますが、スプーンに引っかかってバランスを崩し、アップルパイにずぶりと手を突っ込んでしまい、それを抜くのでいっぱいいっぱいになりました。

「良くきたね、一緒にお茶をしていかないかい?」

えんが誘うと、彼女は顔いっぱいの笑顔になって嬉しそうにうなずくと、ちょこりとお辞儀をしました。
えんが椅子を引いて、彼女を席に座らせます。
と、エリアが長い髪をかきあげながら言いました。

「ああ、でもどうしましょう。もうアップルパイがほとんどありませんわ・・・。」

「気にしないで下さい」と、さっちゃんは言いましたが、みんなは頭を抱えました。
その時です。不思議な鳴き声が聞こえます。まるで、新雪をゴム靴で踏んでいるようなくっくっと言う可愛らしい鳴き声です。
えんは、にこりとしました。それと同時に、えんの頭の上にいたのは、つば広の帽子を被ったシマリスでした。彼がくっくと鳴いていたのです。

「ラタトスク。いつも思うのだけど僕の頭は君の巣じゃない。」

ラタトスクと呼ばれたそのリスは悪戯そうに笑うと、ナナシのところへ大ジャンプをし、耳に口を寄せます。

「おおっ!」

ナナシはリスを頭に乗せると

「おらちょっといってくる!すぐ戻る!」

と言って、ふよふよとどこかへ飛んでいきました。
後には呆然とするエリア・さっちゃん、えんが残されました。



久遠桜が、決して絶えることの無い花びらを、幸せの雨のように降らせ続けています。
そこはMorningParkの森の一番奥深くにある、秘密の場所です。
この桜は、MorningParkの同盟国である、イチイの木の谷「Ydalir」に原木があり、そこから種を分けて貰って植えられたものです。
この桜の木は、夢の水脈へとつながっていて、そこに住む夢先案内人の船に乗ることで、同じ桜の咲いているところへならば、何処へでも行くことが出来るのでした。
二人(二匹?)はその美しい桜をしばし見上げて、嘆息をついています。

「おおっと、見とれている場合ではない。さちえが待っている。」

いつのまにかさっちゃんを呼び捨てにしているナナシは、栗鼠のラタトスクと手をつないで頷きあうと、目を閉じて祈ります。
するとたちまちにして、彼らは舞い上がる桜の花びらの竜巻になって、消えてしまうのでした。



「おぉおおお。みんな来たのね!」

えんは感嘆の声を上げました。
森の奥、肩に桜の花びらを乗っけて、誇らしそうにやってくるナナシとその頭に乗っかったラタトスクの後ろに、白猫の姿をした柚子や、ひまわりの騎士の虎屋、きゃっきゃと駆け回るヨミー、はにかむ刹那やスキップする詩、他にもYdalirの谷の住人の皆さんが、それぞれいっぱいに甘い匂いを立てるお菓子を抱えて、立っていました。
ラタトスクは、Ydalirの国の使者だったのです。
代表して刹那が声を上げます。

「本当はお菓子だけ、届けるつもりだったのですが、みんながどうしても来たいというもので・・・。」

白猫の柚子がぴょんととんで、えんの胸に飛び掛ってきますので、えんは両腕で胸元にしっかりと柚子を抱きかかえると、

「さてはお前がわがまま言ったな?」

と、言いますと、柚子はにゃ?と我知らぬ声で鳴きます。
凛と背筋を伸ばした軽鎧姿の、虎屋と呼ばれる女の子が

「いえ、私もわがままを言いまして・・・すいません。。。」

と、言いますので、えんは言いました。

「いえいえ、大歓迎ってかむしろめっちゃ嬉しいって言う!!」

といって、突然柚子の白猫の両腕を持って踊るようにぐるぐると回ります。
その間に、エリアはさっちゃんの自己紹介をみんなに済ませて、みんなの分のワインやコーヒーや紅茶、どこから持ってきたのか白猫の為に柚子梅酒、ほろ酔いとかかれたチューハイの缶などを準備し、刹那たちから受け取った揚げたての砂糖のいっぱいかかったドーナツや、葉っぱの形の焼き菓子、切った先からとろりとチョコレートの溢れ出すフォンダンショコラ、えんの好きな団子などをテーブルいっぱいに並べました。

「さっちゃんは、甘いもの食べられます?大丈夫?」

エリアが問うと、すでにさっちゃんは酒好きの白猫と、いつのまにやらほろ酔いで乾杯を済ませ赤ら顔です。
えんは刹那にありがとうね、と会釈すると、言います。

「こんな大勢の楽しいティーパーティー・・・酒盛り? は初めてかもしれん!とっても嬉しい!ありがとう!!!」

ナナシとラタトスクはいつものごとく一つの団子のようになって喧嘩のようなじゃれあいをしておりますし、柚子とさっちゃんは飲み比べをしまどろんだ目で肩を組み合い、エリアと虎屋は女の子の話に花を咲かせ、詩はぐるぐる踊りを踊り、せっちゃんはフォンダンショコラに目を光らせえんの隣でフォークとナイフに手を動かし、よみーはいつのまにやら双六堂の屋敷に入って、えんの趣味である中世の武器を興味深げに手にとって、ポーズを決めて楽しんでいます。
他のみんなも、思い思いにティーパーティを楽しんで、森にはいっぱいに、みんなの笑い声が響きわたります。

えんはドーナツを口いっぱいに頬張りながら、今度はみんなを町のほうにも招待したいな、と思います。

その日、森は充分に日が暮れるまで、華やかな幸せの旋律を、世界中に響き渡らせ続けるのでした。

終わり

2012年1月12日 バタバタ木曜日に。
えん

引用なし

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森のログハウスに名前がついた日の話 の続き。 えん 12/1/22(日) 3:33

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